人生は思うようにいかないもの。

いつ頃からか自然とそう思うようになった。

 

けっして後ろ向きな発想だけでそう思うのではなく、

何かを追いかけて生きていると、たった一つの前進が

とてもつもなく大きな未来につながっているかのような

ある種の幻想を抱きがちだったり、その結果、

自分勝手に想像してた「今」と食い違って必要以上に

人生に敗北感を覚えたり、卑屈な劣等感を増幅させたり・・・

 

自分のことなのに自分のものでないような”制御不能感”と

これ以上できるだけ戦いたくない、ある時ふとそう思ったのが

最初のきっかけだったような気がする。

 

それで、人生というものを逆に捉えるようにしてみた。

私が何かに向き合って、挫折を味わう時は必ず、

この世界は私が思う、想像する結果に向かって進んでいる、

そう心のどこかで過信していなかったか?

 

そうなる根拠はどこにもないのに、何故か無意識に

自分にとって最も都合のいい一つの結果だけを期待してる、

よくよく考えたら、いつも自分はそうだったことに気づいた。

 

「この賞を獲ったら・・・」

「この番組に出られたら・・・」

「このプロダクションに入れたら・・・」

「このレコード会社と契約できたら・・・」

「このCDが出せたら・・・」

 

もっと純粋に夢を追いかけ続けられたら、

本当はいいのかもしれない。そう思うときもある。

 

大概こういうことを思う時は、かつての自分の姿を

想い重ねてしまうような夢追う若者を見る時がほとんど。

今はもう私も人生そこそこ生きてそんな立場でもないけれど、

好きなことで食べてるという意味ではベクトルはある種、

真逆の道に方向転換したというわけではないのかもしれない。

 

一つ新しい経験が増える度、舞い上がるような気持ちに

なるのもよく理解る。これが続いていったら、

ほんとに私が想像してた景色が待ち受けてるかも・・・!

そう思いたくなる気持ちも痛いほどよく理解る。

 

実際にスターダムに乗って一見順風満帆にそんな道を

突き進んでいる人たちもたしかに、いる。

でもそこには外の他人に見えてないことも実際には

沢山あったりもするわけで。

 

何か一定の条件が揃っていたからといって、

けっして思うようにいかないのが人生。

逆に思いも寄らぬことが降ってくることも稀にあるけど。

それは神様からのギフトと思って期待しないのが身のため。

 

ただでさえ人生はそう思うようにいかないのに、

芸能なんて仕事はその最たる世界かもしれないと思ってしまう。

関われば関わるほど、そう感じる。

きっとそれは私自身の関わり方や立場が歳月とともに

変わってきたから、なおさらなんだろう。

 

以前とあるプロデューサー氏からあずかって指導していた

教え子がつい最近、メジャーデビューしたという知らせを

偶然に目にした。あれから10年以上かかった。

 

きっと当時の本人もこんな未来を想像だにしてなかったはず。

色々あったろうけど地道に歌い続けたことだけは事実だろうし、

その一つの結果としてきちんとしたレコード会社から作品を

出せたこと、本当に良かったなと思ったし、この先何があっても

地に足つけて歌っていってほしいと思う。

 

人生が必ずしも思うようにいかないことを知って、

いつの間にか自分の中に出来上がった執着を捨てる潔さを

持つことができたら、ほんの少し人生は生きやすくなる。

そんな気がしている。