歌いたいことがたくさんあるんだ。

人の心というのは不思議なものだ。

もうこれ以上ないと思うほど、歌うことで自分と向き合ってきたのに、

それでもまだ感情の変遷は芽生えるのだなと。

これが歳月の力、というやつなのだろう。

 

今年の春、ひょんなきっかけで久々に自分の作品を聴いた。

完成したものはもちろん、制作段階のものや形にしてないものも。

もう10年以上聴いてなかっただろうか。

 

そこにあったのは、”今、ここにある、私”の目と心で見る

あの頃の情感が織りなす風景。

爆発しそうなほどの気持ちを歌に解放したくて、生き急ぐように

そのコタエをいつまでも自分の中に探し求めていた。

 

今の私は言う、「売れない歌ばっかり歌ってたな。」

そしてあの清々しいまでの無鉄砲さが今となってはどこか愛しく、

思わず笑い泣く。紛れもなく長い時間が過ぎていた。

 

もう一度、自分のために歌ってみようと思う。

でも今度は向き合うためじゃなく、寄り添うために。

 

だから今、歌いたいことがたくさんある。

私の中で、たしかな何かが動き始めた気がしている。