歌う意味

良い歌を聴ける機会が少なくなって久しい。

商業シンガーは別に上手くなくても良くなくても、ある種関係ない。

矛盾を感じないと言えば嘘になるけど、どんなものでもニーズがあるか、

もしくはニーズを作り出せる背景があるならその時点で成立するもの。

少なくとも、売り出す側にとっては何らかの理由があってそうなるわけで。

 

誰か一人、何か一つだけが原因とは思わない。

振り返ってみれば自分自身も、事務所も、時代も、色んなことが

噛み合ない何かを孕んでいたタイミングだった。

それがすべての理由。

 

昔、とあるプロデューサー氏が言ってくれたことがあった。

 

「僕も長年この業界で色んな歌い手を見てきたけど、

あなたの表現力は僕の音楽人生で知る限り一番だと思う」と。

 

氏は社交辞令や世辞で物言うタイプではない。

私にそう言ったこと自体、きっともうご本人は忘れているだろうけど・・・

私にとってはずっと唯一の自信の拠り所だった。

 

良いものが認められ売れるわけではない現実を知った今でも、

腐るほど多くのプロの歌を聴いて来た方々から

賞賛の言葉を頂けることは、素直に嬉しい。

 

あれから、来年で20年経つ。

私も先輩方も、それぞれの状況と立場なりに傷つき、苦しんだ。

それぞれに紆余曲折を経て、そして今を生きてる。

 

私が歌唱者としてこの先、表舞台に立っていくことに

意味があるかどうかは正直分からない。

でも、求める声がある限り歌ってみようと思っている。

 

今はもう、あの頃と同じ歌は歌えなくても。