歌う意味

良い歌を聴ける機会が少なくなって久しい。

商業シンガーは別に上手くなくても良くなくても、ある種関係ない。

矛盾を感じないと言えば嘘になるけど、どんなものでもニーズがあるか、

もしくはニーズを作り出せる背景があるならその時点で成立するもの。

少なくとも、売り出す側にとっては何らかの理由があってそうなるわけで。

 

誰か一人、何か一つだけが原因とは思わない。

振り返ってみれば自分自身も、事務所も、時代も、色んなことが

噛み合ない何かを孕んでいたタイミングだった。

それがすべての理由。

 

昔、とあるプロデューサー氏が言ってくれたことがあった。

 

「僕も長年この業界で色んな歌い手を見てきたけど、

あなたの表現力は僕の音楽人生で知る限り一番だと思う」と。

 

氏は社交辞令や世辞で物言うタイプではない。

私にそう言ったこと自体、きっともうご本人は忘れているだろうけど・・・

私にとってはずっと唯一の自信の拠り所だった。

 

良いものが認められ売れるわけではない現実を知った今でも、

腐るほど多くのプロの歌を聴いて来た方々から

賞賛の言葉を頂けることは、素直に嬉しい。

 

あれから、来年で20年経つ。

私も先輩方も、それぞれの状況と立場なりに傷つき、苦しんだ。

それぞれに紆余曲折を経て、そして今を生きてる。

 

私が歌唱者としてこの先、表舞台に立っていくことに

意味があるかどうかは正直分からない。

でも、求める声がある限り歌ってみようと思っている。

 

今はもう、あの頃と同じ歌は歌えなくても。

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コメント: 4
  • #1

    たかぞう (月曜日, 27 11月 2017 13:05)

    こんにちは、Twitterのたかぞうです。
    昨日フォローして、今日直近の呟きやブログ記事を拝見しました。

    まず、商業シンガーになる迄及び認められる迄が大変だなと思います。

    あと、今後プロアマ問わずライブを観ていく上で、観る専として注意する点及び注目すべき点って、どういう所なのでしょうか?

    では、今後も宜しくお願いします。

  • #2

    iidasatomi (月曜日, 27 11月 2017 13:56)

    >たかぞう さん

    Twitterフォロー、コメントありがとうございます。

    私なりに長年の経験からここ数年思っているのは、
    歌唱者本人もそうですが、”何のために歌いたいのか”、
    それを客観的に理解していることが必要ということですね。

    私自身はもともと表舞台に立つシンガーソングライターとして
    業界に入りましたが、紆余曲折あって現在は主に裏方に回って
    歌や制作の仕事をする立場にいます。

    ひと言で歌と言っても
    その歌い手が何のために歌いたいのかによって
    最適な結論は真逆にもなり得ます。

    たとえば、その子が売れる商業歌手になりたいと思っているなら
    自分がやりたいことだけやってる限り恐らく確実に成功しないし、
    自分の満足のためだけにやりたいなら敢えてやりたくないことなど
    一切やる必要もないですよね。

    昨夜のような番組に手を挙げるような子たちは
    きっと売れる商業歌手になりたいと思っている可能性が高いので、
    それだとやりたいことだけやってても効率が悪いだろうなと
    経験上思います。

    ”やりたいこと”と”向いてること”は往々にして異なる

    ことが多いです。

    自分が良いと思うスタイルで誰しも成功したいと思いがちですが、
    商業歌手としての成功には実はあまり当てはまらない方程式だったりします。

    リスナーさんたちがそんなことを気にして応援する必要はないのですけど、
    対象がどんな目的のために歌に向き合っているのかを予め理解した上で
    観ることができれば、不要な両者のエゴの衝突もストレスもなくなるかと。

    趣味で歌いたい子に商業シンガー流の正攻法を求めるのも
    商業シンガーでのし上がりたい子に売れる目のないスタイルを求めるのも
    ナンセンスですからね。

    少々長くなってしまいましたが、
    こんな感じでお答えになってたら幸いです。

  • #3

    たかぞう (月曜日, 27 11月 2017 19:24)

    返信ありがとうございます。

    確かに今のドメジャーなアーティストさん達は、決して自分のスタイルではないであろう楽曲とかを受け入れ、そしてこなして
    ヒット曲を生み出すことに繋がっている場合が多いですよね。
    (その売れたシングルのCW曲を聴くとそういうのが分かる場合がある)

    どんな目的で歌に向き合っているか…。
    今応援しているボーカルさん全てにそれを問うことや聞くことは難しいですが、
    路上を含めてライブを観て、少しでも理解出来るようになれば良いのかな?

    あと、最近関東だと「目指せZeppTokyo及び日本武道館」を大々的に掲げて路上ライブをしている方が多いのですが、
    それらのアーティストそれぞれがその言葉の中に、さらにどんな歌う目的や歌に向き合えているのかを、理解出来ればなと思いました。

  • #4

    iidasatomi (月曜日, 27 11月 2017 19:51)

    残念ながら良いものが必ずしも売れるものとは限らない。
    それと同じように、上手ければ売れるわけでもない。
    これが商業音楽という世界のリアルです。

    夢だけを見ている若き歌唱者たちには往々にして
    その本質が見えていないことが多く、
    自分の憧れだけをただひたすら追いかけてしまう傾向があります。
    昔の私もそうでした。

    何のために歌いたいのか、
    その答えさえ実はとうの本人は分からず歌っていることも多いですが、
    それだと絶対にゆくゆくブレていきます。

    最初からこれを知っている歌唱者はなかなかないと思いますが
    本格的に道が潰える前に何らかの形で気づくことができた人だけが
    何らかの形でこの業界を生き残っているんだと思います。